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スズキ目 ハゼ科 絶滅のおそれのある地域個体群(LP)

和名 関東地方のジュズカケハゼ  
学名 Gymnogobius castaneus (O'Shaughnessy, 1875)
原記載 O'Shaughnessy, A. W. E. Ann. Mag. Nat. Hist., British Mus., Ser. 4, (15): 145
英名 Gymnogobius castaneus goby“Jyuzukakehaze”(Populations in Kanto District)
固有性



摘要

ウキゴリ属の1種で、東日本一帯に分布する純淡水産の魚種であるジュズカケハゼの関東地方の個体群。近年のアイソザイム多型分析により、ジュズカケハゼは東日本型、富山型、関東流域型の3つの遺伝的集団があるとされている。河川の中、下流域や湧水のあるような砂泥地を好み、幼魚、成魚とも一生を淡水域で過ごす。河床や水質の汚染、湧水池の消失、河川の護岸整備や改修工事により生息環境が改変することによる個体数の減少が危惧されている。とくに関東地方の河川、湧水池は環境変化が著しいので、関東流域型は激減している。


形態

ウキゴリ属のハゼとしては中型で、成熟個体の全長は、オスは約50mm、メスは約60mm程度で、メスの方がやや大きい。縦列鱗数は58〜60枚。平常時の体色は、体は明るい褐色で、体側に4〜5個の幅の広い横帯が明瞭であることで近縁のビリンゴ(G. breunigii)と区別されるが、外形や色彩では両種の区別は困難。3〜5月の繁殖期には、オスは平常時とあまり変わらないが、メスは胸鰭、尾柄部、尾鰭を除く全身が黒くなり、体側には鮮黄色の横帯が目立つ。頭部には眼上感覚管と眼上管の開孔がない点で、同属近縁種のビリンゴやシンジコハゼ(G. taranetzi)と識別できる。


分布の概要

種としては、北海道から福井県、長野県、千葉県、東京都、神奈川県などの主に北陸・東北日本一帯に分布する。対馬や九州地方での記録もあるが、自然分布とは考えられず、近縁種のビリンゴの誤同定と思われる。関東地方のジュズカケハゼとされる遺伝的集団は、神奈川、東京、千葉、茨城、埼玉、群馬各都県のものであるが、東京都、神奈川県のジュズカケハゼは絶滅寸前と思われる。


生物学的特性

河川の中・下流域の河岸で流れのある場所や湧水のある場所を好む。また河川とは隔離された湖沼や池、堀などにもすむ。粒土の細かい砂泥底に繁殖期は生息孔を掘って産卵する。餌はユスリカの幼虫などでの小動物食。純淡水域だけで生活する。東日本での産卵期は3〜5月で、オスは泥底に10〜20cmの巣孔をほとんど垂直に掘る。

オスや巣穴の獲得をめぐって、メス同士の激しい闘争がおきる。ペアの巣ごもりはほぼ1日で、メスは孔の壁面に産卵する。この間は巣孔の入り口をオスが泥で塞ぎ、保護をする。


分布域とその動向

東北地方では個体群を維持できるだけの環境がまだ残されているようであるが、関東地方のとくに東京都や神奈川県のジュズカケハゼは絶滅寸前と思われる。


個体数とその動向

生息環境の減少により、東京都、神奈川県のジュズカケハゼは絶滅寸前である。


生息地の現況とその動向

湧水のある池やため池、湖沼などの閉鎖水域にすむものにとっては、生活環境の減少・消失が全国的に著しいので、個体群の確保と同時に生息水域の保全対策が急務である。


存続を脅かしている原因とその時代的変化

河床や水質の汚染(31)、湧水池の消失、河川の護岸整備や改修工事(13)により生息環境が改変することによる個体数の減少が危惧されている。


特記事項

Stevenson(2002)によりウキゴリ属(Gymnogobius)の分類学的検討がなされ、ジュズカケハゼはG. castaneusに、ビリンゴはG. breunigiiに、シンジコハゼはG. taranetziに学名の整理が行われた。


保護対策

とくになし。


参考文献
1. 岸由二,1989.ジュズカケハゼ.川那部浩哉・水野信彦(編),日本の淡水魚,p. 614.山と渓谷社,東京.
2. O'Shaughnessy, A. W. E., 1875. Descriptions of new species of Gobiidae in the collection of the British Museum. Ann. Mag., Nat. Hist., Ser. IV, (15):144-148.
3. 篠崎敏彦・後藤晃・初見真知子,1996.ウキゴリ属Chaenogobius taranetziを含めたジュズカケハゼ(C. laevis)複合種群の遺伝的分化.1996年度日本魚類学会年会講演要旨,p. 34.
4. 篠崎敏彦・初見真知子,1995.アイソザイム多型分析によるジュズカケハゼグループの遺伝的分化.1995年度日本魚類学会年会講演要旨,p. 28.
5. Stevenson, D. E., 2002. Systematics and distribution of fishes of the Asian goby Genera Chaenogobius and Gymnogobius (Osteichthyes: Perciformes: Gobiidae), with the description of a new species. Species Diversity, 7: 251-312.
6. 高木和徳,1966.ハゼ科魚類の1種、Chaenogobius annularis Gill,1858,の分類および同定.I.原記載の再検討、特に分類形質としての上顎相対長の評価, II.C. annularis Gill sensu Tomiyamaの種的異質性.付、ジュズカケハゼ属(新称)、Rhodoniichthys,gen.nov.,の記載.J. Tokyo Univ. Fish., 52(1): 17-45.

Gymnogobius castaneus : Perciformes, Gobiidae (Populations in Kanto District) [Plate 16-B]

Gymnogobius castaneus is distributed in eastern Honshu, recent allozyme studies having revealed that the species comprises three distinct genetic aggregations. The fish inhabits lowland freshwater streams and ponds, preferring those fed by spring water. However, habitats are shrinking, particularly those in the Kanto region.

林 公義(横須賀市自然・人文博物館)


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